旅の垢を落とすとはよく言ったものだが、松尾芭蕉と河合曽良の師弟も道中に湯浴みを好んだ。
 そもそも、貴重な機会である。庵に腰を落ち着けていた頃とは違って、旅の内ではどうしようとも、浸かりたいときに浸かるということが出来ない。そうであるからして例えば宿を取ったともなれば、入浴が実に食事や布団と同じほどの楽しみとなるのだった。
 湯浴みの際、人の家の浴場にて世話になる場合には、ふたり別々に湯を使うことが常である。大の男が二人、その規模を考えてみたならば無理のないところだ。逆に、宿の浴場の世話になるような場合には、肩を並べて湯の中へ入ることも少なくはない。どうしても連れ立たなくてはならぬ理由のあるわけでもないのだが、しかし連れ立たずにわざわざ別々で済ませてしまう理由も、彼ら師弟には取りあえずはないのだ。

 さて。そのようにして入浴を楽しむ際の松尾芭蕉には、河合曽良も首を傾げる何やらおかしな癖がある。



「……だから、どうして乳を隠すんですか」
「え……なんだろ、なんとなく。条件反射?」
 むしろ問う様にして返答する芭蕉に、曽良は若干その眉をしかめた。しかしいつぞやのごとくに、蹴りをかまして止めさせるという選択はとらない。力を抜いて、温かな湯へと深く浸かりこむ。同様に芭蕉も、肩までしっかりと入り込んでから胸を隠す自らの両腕を解いた。
「本能ですか。そこが芭蕉さんの弱点なのかも知れませんね……ああ、いや。弱点でしたね、実際」
「はァ? 弱点ねえ、マッスオにそんな軟弱なもんあるわけないと思うけどー」
 どこか気の抜けた声色をもって言葉を交わす。体温よりもやや熱く深い湯は、ふたりの身体からあらゆる疲労をじわじわと吸い取り、緩やかに脱力させるのであった。


「触れるだけでも擦っても、齧ってやっても感じるでしょう……」
「て、そ、そッ!?」

 かと思えば、芭蕉は慌てて水面を跳ねさせその天国から立ち上がる羽目になる。
「そ、曽良くん! そっちかよ! それは弱点と、か、関係ないだろっ君のせい……!」
「いいえ、芭蕉さんぐらいです。あんな風になるのは」
 曽良が自分のいったい『なに』を話題にしているのか理解してしまったため、解らない振りもしそこねた以上には、反論を続けるほかがない。とはいえ芭蕉は語調を弱めて、そろそろと屈みなおし、首から下を湯の中へ戻す。
「そ……そこまで極端と……ちゃうわい」
「そうですか? 男にしては……あと、赤面しないでください」
「してない! してたとしても曽良くんのせいッ」
「ところで」
「ハナシを逸らすなーっ!」
「ところで。そこまで極端ではないというのなら、芭蕉さんは実際どこまでなんでしょうか」
 果たして話題を逸らしていると言うべきなのであろうか、曽良の視線は狼狽える芭蕉とは対照的に、ゆったりと動いていく。芭蕉が『こちらを見ていない』と思えば、その一瞬の後に互いの視線がぶつかる。
 たった今、かちりとぶつかった。

「ど……何処までって、ええと」
 かと思えば、途切れた。芭蕉の方から逸らしてしまったためである。
「ちょっと、びくってなる……だけで………………って、なに言わすんだよ!!」
 確かに問われはしたものの、そんなところまで答えようとしてしまったのは他ならぬ芭蕉であった。
 と、そうした流れも聞き飛ばした模様で、何故であろうか緩くうなずく曽良である。
「なるほど」
 切れ長の視線は、改めて芭蕉のいる方角へと向いてきた。芭蕉も思わずそちらに視線を戻す。今度ははっきりとして、両者のそれが重なり合った。
「それでは、芭蕉さん。試してみましょう」
「……うん?」
「どれだけ『弱い』のか。今晩にでも」
 整った唇はしれっと言い放つ。
「は……じょ、冗談だよね? 久し振りの畳だから、今日はゆっくり休もうって……ほら、さっき!」
 その一方で聞いた芭蕉は、おおきく体をひねって叫んだ。
 大声は浴場に響いて渡る。他に客のあったとしたらば注目の的となっているところであろうが、幸か不幸か、湯に浸かっているのは芭蕉と曽良のたった二人のみという状況であった。
「風呂ぐらい大人しく楽しめないんですか。沈めますよ」
「曽良くんがシャレになんないシャレでからかうからだろっ……コノヤロー」
 がっくり力なく肩を落とすと、ひとつ深い溜め息をついてから、首まで浸かりなおす芭蕉である。
 そのすぐ横では曽良が両瞳を閉じていた。じっと黙して、染み入ってくる湯の温もりを楽しんでいる様だ。


 波うっていた水面はやがて平らに戻り、また穏やかな湯浴みの時間が流れていく。
 それだから芭蕉は、考えることを止めてしまったのであった。ここへ至るまでのやり取りを、すべて冗談だということにして自身の内にて処理してしまった。

 しかし、それらは決して冗談ではなかったのである。まったくもって洒落ではなかった。この事実が後に芭蕉を後悔へと、更には後悔すらも忘れてしまうほどの焦燥へと、巻き込んでいくことになる。






 ふたつ敷かれた布団の一方に、曽良が芭蕉を追い詰める。
 上から囲われ押さえつけられてしまうと、前にも後ろにも左右の横へも喚けど足掻けど逃れられないのだった。真っ正面から押し倒された状態で、芭蕉は歳若い弟子を見上げる羽目になる。
「曽良くん、き、きみ! ……本気?」
「何がですか」
「なにがって、たったいま正にこの状況以外の何モノでもないよ! 試すって、マジだったの? マジ? マゾ?」
 ひどく狼狽えて放った言葉はいまいち上手く繋がっていない。
「あいにく、嗜虐的趣向はありませんが……僕には」
「やめてよその、いかにも『お前にはあるんだろうけどな!』とでも言いたげな視線っ……ねえ、今日はこのまま寝るんだろ? これっていわゆるジョーク河合?」
「冗談の趣味もありません。芭蕉さんこそ、さっき何を聞いていたんですか」

 そこで芭蕉は、悠長にも考えを巡らせた。『さっき』というのは如何なる『さっき』であっただろうか。夕食に出された焼き物が美味くて、半分ほどを最後まで残しておいたら見事に冷めきってしまったこと。部屋の外が薄暗いので、用を足しに行くのが恐ろしくて泣き言をこぼしたこと。どちらとも曽良によって馬鹿にはされたものであるが。
(風呂ではありませんように、風呂ではありませんように、風呂では……)
「風呂で……」
「やっぱ風呂かよ!」
 それ以外の何ごとであろうはずもなかったのだが、芭蕉は往生際の悪い男だった。
「それ以外のなんだと言うんですか。言ったでしょう、試すと」
「わ……忘れちゃったよ。のぼせてたんじゃないかなァ、君も私もっ」
「芭蕉さんが乳への刺激だけで、情けなく達せるのかどうか……」
「そこまで言ってなかっただろ!」
 往生際の悪い上に、余計なことまで口走ってしまった。
「……覚えているようですが」
 曽良が冷え冷えと見下してくる。芭蕉は後悔と焦燥にかあ、と頬を染め、首を大きく横へ振った。
「と、とにかく……そんなん、出来るわけないだろ? 普通に、いや、とにかく普通に寝かせろよもうっ! 大体せっかくさっきまでお風呂ッ……」
「どうせ何時かは汚れます。そうなれば関係ないでしょう」
「君こんな時だけ! 無頓着なことを!」
 思わず暴れだす芭蕉であるが、それが良くない選択だった。曽良もいよいよ本格的に、押さえつけようとかかってくる。


 そして芭蕉は敗北した。そもそもの体力差に加えて、既に上を取られていたとあっては無理もない結果である。健闘は散り、しからば芭蕉の身体は布団へと沈み、辛うじて蠢く爪先によって硬い畳を蹴るほかが無いのであった。
 せっかく纏った新しい寝間着が、曽良の手によって胸元から開かれる。

「や、ちょっ、ちょっと曽良くんッ」
「前置きは結構」
「君が決めることじゃあないだろ!」
 とはいえ決して、初心な歳頃が初めての恋人とするような甘い言葉の欲しいわけでもないのだが。曽良はちろりと舌を出し、芭蕉の胸板へと顔を埋めた。僅かな灯りに照らされるその様が、情緒であるというのならばそうであるのかも知れない。
 ぼんやりと考えているうちに、曽良の舌先はあらわとなった芭蕉の皮膚をつうと舐りあげた。
「ひゃっ……!」
 その蠢きはあっさりと、問題の乳頭へも至る。洗われたばかりである芭蕉のそこは、皮膚と同じほどに薄く大人しい色をしていた。
 まずは右側を舐められる。次いで唇に挟まれて、ごく軽くではあるものの硬い前歯をたてられる。
「ンっ」
 すると段々とこみ上げて来るものがある。ぞわり、とした何か。
 たったいま触れられているのは間違いなく身体の外側であるのだというのに、実際には内側のより柔らかな場所をまさぐられているのではないかという、不可思議な感覚だった。
「ん、ぁ」
「……やけに声が出ますね」
 曽良の唇が離れていく。離れていっても、じんじんとした疼きは残される。芭蕉の乳頭は右側だけ唾液に濡れ、微かにしこり尖っていた。
 そうして気がつけば、その箇所をまんじりと見つめられている。
「あ……あんま見んといて、そら、くん?」
「面白いので」
「なんも無いよ、別にっ……」
 深い黒色の切れ長は、芭蕉の視界にてぱちぱちと瞬く。決して面白味を感じているような風ではないのだが、どこか興味深げではあった。それが芭蕉をまた密やかに不安の渦へとたたき込む。
 嫌な予感に限って当たるとはよく言ったもので、曽良の指先は、今度は芭蕉の左側を捕まえるのであった。
「こっちは。どうですか」
 ぐりぐりと様々な角度から擦られる。
「ぎゃっ、や、ああッ」
 摘み、弄くり、とにかく遠慮の感じられない曽良のやり方に対し、芭蕉は暴れて反抗した。しかし逃れることは出来ない。乳頭を苛む指先を除いて曽良の首から下すべては、芭蕉の身体を押さえつけるという動作に注がれていた。
「……喧しい」
「ひ、ひぃンっ……!」

 皮膚と爪とに揉まれ、転がされ、時にはまた舌先を使われる。その内やがては左右どちらとも、別の何かを思わせる様に勃ち上がった状態が常となる。
 気付いた芭蕉は恥じてそこから目を逸らした。しかし。

「こちらもですね」
「ふぁ、ううぅ!?」
 直後に全身を跳ねさせ、視線の行く先どころではなくなってしまう。
 いつの間にやら曽良の片手が下帯の位置まで伸びていて、布の上から芭蕉の股座を丁寧に擦ってくるのだ。そこは散々に弄くられた上半身の膨らみと連動するかのように、緩やかにも盛り上がっている。はだけられた寝間着からは隙をみて帯も抜き取られていたのだった。
 芭蕉は反射的にかぶりを振る。
 すると、思うよりあっさりと感覚が失せていった。どうやら曽良にはそれ以上、芭蕉の下半身までもを苛むつもりはないらしい。
「あっ……ぁ」
 離れていく掌を、呆然と見送る。ともなれば感じるべきはまず安堵であるはずだというのに、芭蕉の内には当人の意識を裏切って灯りだす疼きがあった。漏れる声色はどこか名残惜しさと欲とを秘めたものになる。
「嫌ではなかったんですか」
 そんな様子を見て取り曽良は、冷めた声色を放って揶揄する。確かに芭蕉は首を左右へ振ったのだ。
「や……い、やだけどっ」
「なら、物欲しそうな顔をしないでください。うざい」
「うざい、って君! き、きみが勝手にッ……!」
 言い返そうと起き上がりかけた芭蕉の上半身を、しかし曽良の掌が勢いよく押し戻す。
「ぶぎゃッ」
「焦らなくても、して差し上げます。上の方だけ」
「む……無理、だって」
 すずしい声で言い放たれて、芭蕉は呻いた。胸元を押さえ込まれているがためにひどく息苦しい。が、たった今にはそれすらも、乳頭へと散々に施された刺激を思い起こさせる材料となるようであった。
「……さあ。やってみないと解らないじゃないですか」
「…………っ」
 芭蕉の身体は呼吸とともに震えるばかりで、被さってくる曽良の言葉に言い返すための声ももたない。

 意識の上では、やらんでいいよ、と確かにそう考えたはずであるのだが、しかしついには口から言葉として出てこなかった。
(あー、あぁもうまたッ……)
 それだからまた、負けてしまってされるがままに流されていく。


 薬指の爪の先をつかって、右側をやわやわとまた掻きくすぐる。
 すると全身にぴりぴりとした感覚が広がって渡った。瞬く間に体温が上がっていく。体の芯がとろんとふやけて、視界すらも怪しくなってくる。
(曽良くん……どこ、いるんだろう)
 ふと彼の姿を見失い、芭蕉の意識はぼんやりとした快楽の中を彷徨った。
 そのとき、左側の乳頭を柔らかな粘膜が包み込む。
「ひぅッ」
 芭蕉に声をあげさせたのは他ならぬ曽良の唇であった。
(これ、こうしてるの、曽良くん……そこにいるのか)
 舐り弄くるこの男の存在は、相も変わらず安堵と不安をない交ぜにして与えてくれる。
(今度はそっち? でも、右も左も一緒だろうに……) 
 肌の他の箇所と比べて、本当に少しばかり色濃い。唾液に濡らされればてらてらと艶めく。
 多少なりとも過敏であるとして、それはもう仕方のないことだろうと芭蕉は薄ら考えた。思えばその部分の皮膚というのは薄く柔らかく出来ているのだし、そもそも曽良が狙っていやらしい弄くり方をするからいけない。
(……君が先に舐めてたのって、どっちだったっけ)
 先に触れたのはどちらであったか。
(両、方? 今は?)
 唇は左、指は右。
(あ、ぁ、ひ、だり……擦ってるの、曽良くんの舌、おもての方っ……)
 続けて唇に挟まれたかと思うと、そこから先端をちろちろと嬲られる。唾液を注がれているかのようだ。
(そこだって、で、出るとこなのにっ……いや、私は出ないけどッ)
 しかし、傷つけば血を流すこともあるのだろう。
(……噛んだりなんか、しないよな?)

 右も左も、撫でられ続けて濡らされている。
「は、ふっ……」
 今のところ痛覚はない。ひどく痺れて、熱されるばかりだ。
 曽良は芭蕉の、柔らかくそして過敏な箇所のふたつ両方へと触れている。
(どうして……そんなとこに固執するんだか。曽良くんって、不思議なやつだよなぁ……じゃなくて。こんな風な関係が、そもそも)
 思ううちにも芭蕉の中では、じんと疼く感覚が上下左右に這いずって蠢く。段々、じわじわと広がっていく。
(あぁ、あれ…………っ)

 そうして世界は反り返った。



「ひゃンッ」
 ばちん、とひとつ震えて極まってしまう。

 芭蕉の下帯が染み出るほどに濡らされた。そこから暫し、やや茶の混じった色素の瞳を曇らせて、びくびくとその感覚のうちに溺れる。
 そうした中で曽良の掌に股座を撫で上げられ、とろけた意識の狭間から強引に浮上させられた。
「……え……あ、ァ」
 気怠い刺激が芭蕉を揺さぶり覚醒に至らせる。
「出ましたね」
「う……っそ、な、んで。……なんでッ」
 それでも身体の方は未だに、痙攣に支配され自由にならない。
「それとも、漏らしたんですか?」
「ち、がうッ」
「なら、達したんですね。胸だけで……やはり弱かったようですね」
 淡々とした曽良の声色は、かえって羞恥を煽るものであった。
 芭蕉はまたも首を振り、せめてもの否定を為す。返せる言葉は何もない。
「ここだけが弱いというのでなければ、まさか全身がこうなんですか。それはそれで救いようがないとは思いますが」
 それも違う。と、続けて首を振りながらに、ひくんひくんとしゃくり上げる。喉を震わせる芭蕉はまなじりをも濡らしていた。


 やがて下帯をずるりと脱がされてしまっても、やはり抵抗を起こせぬままである。
 覆いを失った芭蕉の下肢の付け根は、白いものを少しばかりつう、と糸ひかせ、その存在を主張する。曽良のことをどうにかしなければという焦燥に先んじて、まず何よりも己の頬を殴り飛ばしてやりたくなるような羞恥が、芭蕉の内を駆け巡っているのだった。
「なぜ、こんな風になるんでしょうね。元からこうだったんですか」
 一方的に語りかける傍ら、曽良は下帯の布までもじわりと濡らしたものをすくって、後ろ側へと馴染ませてくる。その間にも、あいている方の掌や舌先を使って胸の小さな尖りをいじめる。弄くられることを続けているそこは、ささやかに腫れて尚それらしく色づいていた。
(なん、だよ……結局、先までやっちゃうのかよ)
 ただ『試す』のだと言っていたくせに。それではもう、本来の目的とやらも何もない。
 息も絶え絶えにして芭蕉が考えていると、ぽつりと響いてくる曽良の声があった。

「それとも、芭蕉さん。これまでに……」
 しかし、そこまでで消え入るかのように途切れる。

 かわりに下肢の方へと舌を運ばれた。曽良の柔らかくざらついた粘膜が、細められて芭蕉の陰茎の先端へ侵入する。
 そこから更に咥え包まれ、丁寧に吸い上げられた。
「ひうぅッ!?」
 幾度かに分けて唇で扱く。先程に胸を嬲られたときと舌の動き方こそは似通ったものであったが、受ける感覚はその比ではない。
「ひいぃ、あ! ぁ、んンーッ……!」
「……漏らし過ぎですね」
 こんなに要りません、などと続けながらも、曽良は指の腹を使って芭蕉の垂らした液体をすくった。纏わせて濡らすと肛腔に触れ開きにかかる。程なくして、入り口の擦られるぬちぬちという水音が、ふたりの聴覚を染めはじめた。


(……いらないだなんて言うのなら、そんなもん吸わなきゃ、いいのにッ)
 全身を突っ張らせながらも、芭蕉は密やかに狼狽する。
 自分自身ですら目も向けたくないほどに、羞恥きわまりのない汚濁。そんなものによって彼は端正な唇を濡らすのだ。その内側の柔らかな粘膜でもって受け止めて、やがては躊躇いもなく飲み下してしまうのだ。
(私のこと……見下してる、くせにっ……あ。飲み下すと見下すって、似てる、な)
 そのように、ただ単なる冗談であったならばどうしようか。

 このような行為のひとつひとつが。よもや単なる戯れの冗談であったとしたならば。
(ね、そ、曽良くん……そんなん、言わないよね?)
 与えられるばかりのぞわぞわとした感覚に加えて、微かなむず痒さが芭蕉の身体を包み込む。
(だって私が、こんな風になってるのは……なった、のは)
 撥ね除けてしまおうとしても成せぬのは、結局のところこうして、何もかもをとどめられずにいるのは。

「いぁ、ぁだ、ったいッ……曽良くぅッ……!」



(そんなのは、ぜんぶ……)

 すべて、すべて、目前の彼が。








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